その「C判定」、1年後には「E判定」かも?「経過観察」を放置するリスクと、再検査・精密検査を受けるべきタイミング。

健康診断の結果表に記された「C判定(要経過観察)」の文字。
「A判定ではなかったけれど、治療が必要なわけでもない。とりあえず様子を見て、来年の健診でまた考えよう」
自覚症状がないことも手伝って、このように自己判断し、結果をしまい込んでしまう方は少なくありません。
しかし、私たち専門医から見ると、その判断は極めて危険な選択肢となり得ます。「C判定」は決して「安心」のサインではありません。それは、あなたの身体が発している「将来、病気に進行するかもしれない」という重要な警告であり、放置すれば1年後、数年後には「E判定(治療中)」へと移行しかねない、重大な岐路に立っていることを意味します。
この記事では、なぜ「C判定」の放置が危険なのか、その医学的根拠と具体的なリスク、そしてあなたの未来を守るために「いつ、何をすべきか」を、専門医の立場から徹底的に解説します。
「C判定(要経過観察)」の医学的な本当の意味
まず、C判定が何を意味するのかを正確に理解することが重要です。C判定とは、「検査値が基準範囲から外れており、現時点では病気と断定できないものの、身体に何らかの異常がみられる状態」を指します。
これは、二つの側面を持っています。
- 「今は病気ではないが、いずれそうなるかもしれない」という警告
- 「今は異常があるが、生活習慣の改善で正常に戻るかもしれない」というチャンス
どちらの未来に進むかは、この結果をどう受け止め、どう行動するかにかかっているのです。自覚症状がないからと軽視していると、水面下で静かに病状が進行してしまうケースは決して珍しくありません。
C判定の放置が招く、深刻な疾患リスク
「経過観察」という言葉の響きとは裏腹に、その先には具体的な病名が待っている可能性があります。ここでは、代表的なC判定項目を放置した場合の進行リスクを解説します。
- 血糖値・HbA1cの異常 → 糖尿病へ
血糖値が正常よりやや高い「境界型糖尿病」の状態を放置すると、数年以内に本格的な糖尿病へ移行するリスクが劇的に高まります。ある研究では、境界型の基準を満たす人は、そうでない人に比べて糖尿病の発症リスクが最大30倍以上に達すると報告されています 。糖尿病は一度発症すると完治が難しく、網膜症や腎症、神経障害といった深刻な合併症を引き起こす病気です。 - 脂質(コレステロール・中性脂肪)の異常 → 動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞へ
LDL(悪玉)コレステロール値などが基準を少し超えた「境界域」の状態でも、放置すれば血管の内側に脂質が蓄積し、動脈硬化が静かに進行します。動脈硬化は、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気を引き起こすサイレントキラーです。 - 肝機能(AST, ALT, γ-GTP)の異常 → 脂肪肝、肝硬変、肝がんへ
肝機能の異常は、多くの場合「脂肪肝」が原因です。これを放置すると、肝臓に炎症が起きる「脂肪性肝炎(NASH)」へと進行することがあります。さらに悪化すると、10年後には10~20%が肝硬変になり、肝硬変からは年率数%の確率で肝がんが発生するとされています。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、症状が出たときには手遅れになっていることも少なくありません。
「再検査」を受けるべきタイミング、その医学的根拠
では、C判定を受け取ったら、いつまでに医療機関を受診すべきなのでしょうか。結果表には「3か月後」「6か月後」「1年後に再検査」といった指示が書かれているはずです。この期間設定には、明確な医学的意味があります。
- なぜ「3か月」「6か月」なのか?
この期間は、生活習慣の改善による効果が数値に表れるのを待つため、そして、その異常が一時的なもの(体調不良など)か、持続的なものかを見極めるために設定されています。また、この期間内であれば、多くの場合、病状の進行はまだ穏やかで、
早期発見・早期治療に結びつけやすいと考えられています。逆に言えば、このタイミングを逃すと、病状が一段階進んでしまう可能性があるのです。 - 「再検査」と「精密検査」の違い
- 再検査: 健康診断と同じ検査を再度行い、異常値の再現性を確認します。
- 精密検査: 異常の原因を特定するため、より詳細な検査を行います。例えば、便潜血検査で陽性なら大腸カメラ、肝機能異常なら腹部エコー検査などです。
指示された時期を守ることは、手遅れを防ぐための最低限のルールです。もし不安が強い場合は、指示された時期を待たずに専門医に相談することも重要です。
C判定は「行動」への招待状。今すぐ始めるべきこと
C判定は、悲観するためのものではなく、行動を起こすための絶好の機会です。
- 生活習慣の改善を今日から始める
結果を放置せず、まずはご自身の生活を振り返りましょう。食事(塩分・脂肪・糖分を控える)、運動(有酸素運動の習慣化)、禁煙、節酒など、できることからで構いません。具体的な改善策は、医師や管理栄養士に相談するのが最も効果的です。 - 医療機関を予約し、必ず受診する
生活改善と並行して、指示された時期に必ず再検査・精密検査を受けてください。C判定後の検査は保険診療の対象となるため、ご自身の健康状態を詳しく知るためのまたとないチャンスです。どの科を受診すればよいか迷う場合は、健康診断を受けた施設やかかりつけ医に相談しましょう。
まとめ:C判定を放置せず、未来の健康を守る一歩を
「C判定(要経過観察)」は、「様子を見ていい」という免罪符ではありません。それは、あなたの身体が発する最後の警告であり、生活を改め、専門家と向き合うべきだというサインです。
そのサインを無視すれば、1年後、数年後には治療が不可欠な状態へと進んでしまうかもしれません。しかし、真摯に受け止め、適切な行動を起こせば、病気の発症を防ぎ、健康な未来を手に入れることができます。
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