「去年と同じ数値だから大丈夫」の落とし穴。年代と共に変わる基準値と、40代から特に注意すべき検査項目。

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「去年と同じ数値だから大丈夫」の落とし穴。年代と共に変わる基準値と、40代から特に注意すべき検査項目。

健康診断の結果を手に取ったとき、多くの方が昨年の数値と比較し、「よし、去年と変わらない。大丈夫だ」と胸をなでおろすのではないでしょうか。この「去年との比較」は健康管理の基本ですが、そこに大きな落とし穴が潜んでいることをご存知でしょうか。

それは、「同じ数値」であっても、あなたの「年齢」によって、その数値が持つ医学的な意味やリスクは大きく変わるという事実です。

特に、身体の大きな転換期を迎える40代からは、これまでと同じ物差しで健康を測ることはできません。この記事では、専門医の視点から、「去年と同じだから大丈夫」という自己判断の危険性と、年代、特に40代以降の身体の変化に合わせた健康診断結果の正しい見方、そして本当に注意すべき検査項目について、深く掘り下げて解説します。

落とし穴①:「基準値」は一生同じではないという事実

健康診断の「基準値」は、絶対的で固定されたものではありません。実は、年齢や性別によって変動するものが数多く存在します。

  • 女性のコレステロール値: 例えば、女性のLDL(悪玉)コレステロールの基準値は、女性ホルモンの影響で年代によって変わります。閉経期を迎える40代後半から50代にかけては、女性ホルモンの減少に伴いLDLコレステロール値が上昇しやすくなるため、若い頃と同じ数値でも評価が変わることがあります。
  • 高齢者の血糖値: 糖尿病の治療目標であるHbA1cの値も、高齢になると低血糖のリスクなどを考慮して、若年層とは異なる目標値が設定されることがあります。

つまり、30代の頃の「A判定」の数値が、40代、50代では「B判定」や「C判定」に相当する可能性があるのです。「去年と同じ」というだけでは、加齢に伴うリスクの変化を見逃してしまいます。

落とし穴②:「同じ数値」でも「リスク」は変化する

たとえ基準値が変わらない項目であっても、年齢を重ねることで、同じ数値が身体に与える影響は変化します。

例えば、25歳の時の血圧「135/85mmHg」と、45歳の時の「135/85mmHg」は、数値上は同じです。しかし、40代になると血管の弾力性は徐々に失われ始め、動脈硬化が進行しやすくなります。そこに高めの血圧が加わることで、心筋梗塞や脳卒中といった重大な疾患を引き起こすリスクは、20代の頃とは比較にならないほど高まっているのです。

重要なのは、単年の数値ではなく、年齢というフィルターを通してその数値のリスクを再評価することです

40代はなぜ「健康の分水嶺」なのか?

40代は、仕事や家庭で中心的な役割を担う多忙な時期であると同時に、身体に様々な変化が現れる「健康の分水嶺」です。

  • 基礎代謝の低下とホルモンバランスの変化
  • 酸化ストレスの増加と免疫機能の変化
  • 生活習慣の蓄積による影響の表面化

これらの要因が複合的に絡み合い、40代からは生活習慣病やがん、心疾患、脳血管疾患のリスクが飛躍的に高まります。実際に、40代のがん罹患数は30代の3~4倍に、心筋梗塞は3倍、脳卒中は5倍にも増加するというデータもあります。もはや「まだ若いから大丈夫」は通用しない年代なのです。

【専門医が解説】40代から本当に注意すべき検査項目

会社の定期健診(法定健診)だけでは不十分です。40代からは、ご自身の身体の変化とリスクを正しく把握するために、以下の検査を意識的に受けることを強く推奨します。

1. 生活習慣病関連:経年変化を注視する

  • 血圧、脂質、血糖: これらの数値は、「去年と同じ」ではなく「数年前からどう変化しているか」というトレンドが重要です。基準値内でも右肩上がりの傾向があれば、それは動脈硬化が進行しているサインかもしれません。
  • 腹部超音波検査: 症状のない脂肪肝や胆石、膵臓・腎臓の異常を早期に発見できます。特に肝機能の数値に変化が見られる方は必須です。

2. がん検診:法定健診+αの視点を持つ

40代は、がんが死因の第1位となる年代です。早期発見のためには、より精度の高い検査が必要です。

  • 消化器がん:
  • 胃カメラ(上部消化管内視鏡): バリウム検査では見つけにくい、ごく早期の食道がんや胃がんを発見できます。
  • 大腸カメラ(大腸内視鏡): 便潜血検査では陰性となる早期の大腸がんや、がんの芽であるポリープを発見し、その場で切除することも可能です。
  • 肺がん: 喫煙歴のある方、受動喫煙が気になる方は、レントゲンだけでなく胸部CT検査を検討しましょう。
  • 女性特有のがん:
  • 乳がん: 40代は乳がんの発症ピークの一つです。マンモグラフィと乳腺超音波(エコー)検査の併用が推奨されます。
  • 子宮頸がん: 定期的な細胞診が重要です。
  • 男性特有のがん:
  • 前立腺がん: 50代を前に、一度はPSA検査(腫瘍マーカー)を受けておくことをお勧めします。

3. 脳・骨など、見過ごしがちなリスクに備える

  • 脳ドック(頭部MRI/MRA): 症状のない脳梗塞(隠れ脳梗塞)や、くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤の有無を確認できます。
  • 骨密度測定: 特に女性は、閉経に向けて骨密度が急激に低下します。将来の骨粗しょう症予防のために、40代のうちに一度は測定しておきましょう。

まとめ:40代からの健康診断は「意識のアップデート」を

「去年と同じ数値だから大丈夫」という考えは、40代からは通用しません。あなたの身体は、確実に変化しています。その変化を正しく捉え、未来の病気のリスクを先回りして管理するためには、「年代に応じたリスク評価」と「経年変化のトレンド把握」という二つの視点が不可欠です。

40代は、これまでの健康への意識をアップデートする絶好の機会です。会社の健診結果に加えて、ご自身のライフスタイルや家族歴に合わせて必要な検査を追加し、かかりつけ医に相談する習慣をつけましょう。

当院では、健康診断後の精密検査(胃カメラ、大腸カメラなど)や、年代に合わせた検査プランのご相談に、専門医が丁寧に対応いたします。柏駅西口から徒歩1分、土日も診療・検査を行っておりますので、お気軽にご相談ください。

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