健康診断の結果、「C判定」や「D判定」の意味を正しく理解してる?専門医が教える結果の正しい見方と活かし方。

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健康診断の結果、「C判定」や「D判定」の意味を正しく理解してる?専門医が教える結果の正しい見方と活かし方。

健康診断の結果が届くと、多くの方がまず「A」や「C」といったアルファベットの判定に目を奪われ、一喜一憂されるのではないでしょうか。「A判定だから今年も安心」「C判定だけど、まだ大丈夫だろう」—。しかし、私たち専門医が健康診断の結果を評価する際、その単年の判定と同じくらい、あるいはそれ以上に重視していることがあります。

それは、「経年変化(トレンド)」です。

健康診断の真価は、1回ごとの結果に振り回されることではなく、継続的なデータを通じてご自身の身体の「変化の軌跡」を読み解くことにあります。この記事では、なぜ単年の判定だけでは不十分なのか、そして毎年のデータを蓄積することがいかに重要であるかを、医師の視点から専門的に解説します。

判定区分の意味と、その「限界」

まず、判定区分の基本的な意味を再確認しましょう。これらは、ご自身の検査値が、多くの健康な人のデータを基に設定された「基準範囲」からどの程度離れているかを示したものです。

  • A判定(異常なし): 基準範囲内です。
  • B判定(軽度異常): 基準範囲からわずかに外れていますが、臨床的に大きな問題となる可能性は低い状態です。
  • C判定(要経過観察/要再検査): 基準範囲から外れており、生活習慣の改善や再検査が必要です。
  • D判定(要精密検査/要治療): 病気の疑いが強く、専門医による詳細な評価が必要です。

これらの判定は客観的な指標として非常に有用ですが、あくまで「ある一時点でのスナップショット」に過ぎません。病気は突然発症するものではなく、多くは時間をかけて徐々に進行します。その変化の兆候は、単年の結果だけでは見逃されてしまう可能性があるのです。

なぜ「単年評価」では不十分なのか?医師が診るポイント

私たちが臨床現場で結果を解釈する際、判定のアルファベットの裏にある「数値の動き」に注目します。

「A判定」に潜む落とし穴

例えば、ある方のLDL(悪玉)コレステロール値が、3年前は「90mg/dL」、昨年は「110mg/dL」、そして今年は「130mg/dL」だったとします。いずれも基準値内(例:139mg/dL以下)であれば、3年連続で「A判定」となるでしょう。

しかし、医師の目にはこれは「明らかな右肩上がりのトレンド」として映ります。このままの生活習慣を続ければ、来年か再来年には基準値を超え、「C判定」になる可能性が高いと予測できます。A判定という結果に安心するのではなく、この「悪化傾向」こそが身体からの重要なサインなのです。

「C判定」が持つ二つの意味

逆に、C判定が出た場合も、すぐに悲観する必要はありません。例えば、仕事の繁忙期で食生活が乱れ、一時的に肝機能の数値が悪化してC判定が出たとしても、その後の生活改善で翌年には正常値に戻ることはよくあります。

重要なのは、そのC判定が「一過性のもの」なのか、「悪化トレンドの始まり」なのかを見極めることです。病気は「点」ではなく「線」で評価すべきであり、その判断には過去のデータとの比較が不可欠です。

健康診断の真価は「経年変化」のモニタリングにあり

毎年の健康診断データを蓄積することの医学的意義は、大きく3つあります。

  1. あなた自身の「個別基準値(ベースライン)」の確立
    人の身体には個性があり、健康な状態でも基準値のやや高め、あるいは低めに出る方もいます。毎年のデータを記録することで、あなたにとっての「平常時の数値(ベースライン)」が明確になります。
  2. 変化の「方向性」と「速度」の把握
    ベースラインからの逸脱が起きた際、それが「緩やかな変化」なのか「急激な変化」なのかを把握できます。例えば、ヘモグロビン値が基準値内でも、昨年から急に2g/dL以上低下している場合、それは消化管出血など何らかの病態を疑う重要な所見となり得ます。これは経年データがなければ気づけない変化です。
  3. 究極の「予防医療」の実践
    数値が悪化傾向を示した段階で、つまり「C判定」や「D判定」が出る前に生活習慣の改善に着手できれば、病気の発症そのものを未然に防ぐことが可能になります。これこそが、健康診断が目指すべき本来の予防医療の姿です。

経年データを最大限に活用するための具体的なアクション

では、どうすれば健康診断の結果を真に価値あるものにできるのでしょうか。

  • 健康診断は毎年、可能な限り同じ施設で受ける
    検査機関によって基準値や測定方法が微妙に異なる場合があります。データの連続性を保ち、正確な比較を行うためにも、継続的な受診をお勧めします。
  • 過去の結果は必ずファイルなどで保管する
    ご自身の健康の記録として、数年分の結果を並べて比較できるようにしておきましょう。
  • 結果を持参し、かかりつけ医に相談する
    これが最も重要です。私たち医師は、数値の経年変化と、あなたの生活背景や家族歴などを総合的に評価し、個別の健康リスクを判断します。C判定やD判定が出た際の精密検査はもちろんのこと、A判定であっても、ぜひ一度ご相談ください。

まとめ:健康診断を「点」から「線」へ。未来の健康を守るための新常識

健康診断の結果は、その年の成績表ではありません。未来の健康な人生を歩むための、貴重な「航海図」です。C判定やD判定は、進路の修正を促す重要な警告であり、迅速な対応(精密検査)が必要です。しかし、たとえA判定であっても、その航路が正しい方向を向いているかを確認するためには、過去からの軌跡、すなわち経年変化を見ることが不可欠です。

毎年定期的に健康診断を受け、そのデータを蓄積し、専門家と共に評価する。この習慣こそが、自覚症状のない病気の兆候を早期に捉え、あなたの健康寿命を延ばすための最も確実な方法です。

当院では、健康診断後の精密検査(胃カメラ、大腸カメラなど)はもちろん、健診結果の解釈や経年変化に関するご相談にも専門医が対応いたします。柏駅西口から徒歩1分、土日も診療・検査を行っておりますので、結果表をお持ちの上、お気軽にご来院ください。

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